なぜサックスはオーケストラの編成に使われていないのか?
なぜサックスはオーケストラの編成に使われていないのか?
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前回は、吹奏楽には弦楽器が使われていないという話を書きました。では反対に、吹奏楽ではよく活躍するサックスは、なぜオーケストラで使われないのでしょうか?
実は、全く使われていないわけではないんです。例えばモーリス・ラヴェルの作った「ボレロ」には出てきますし、同じくラヴェルが編曲したムソルグスキーの「展覧会の絵」ビゼーの「アルルの女」など有名な曲でも何曲かあります。
ただ、ヨーロッパのオーケストラのメンバー表を見ても、正式メンバーとしてサックスパートは存在しませんし、ベートーヴェンやブラームスの交響曲ではサックスは登場していません。
それは、楽器ができたのが新しいから・・・・。という話が多いのですが、本当にそれだけなのでしょうか?
調べてみると、1840年代に完成した楽器で、確かに他の楽器と比べると新しい感じがしますね。ちなみに作ったのはベルーギーの楽器職人「アドルフ・サックス」さんという人で、楽器の製造者がはっきりしているのはかなり珍しい話だそうです。
さて、1840年代ということですが、ベートヴェンが死んだのは1827年。おしい!もう死んでる。ブラームスは1897年没。ヒットですね。少なくともブラームスが生きていた間にサックスが誕生しているわけです。もちろん現代のようにインターネットやAmazonがあるわけではないので、新しい楽器が世界に広まるまでには時間はかかったと思いますが、作曲家というのは好奇心が旺盛で、常に新しい奏法や新しい楽器に敏感なんです。ベートーヴェンだって、交響曲第5番で管弦楽としては初めてピッコロやトロンボーンを採用している。
その後も多くの近代作曲家はあまりサックスを使っていない。それはなぜか?
実は音色的に必要のないものだったから。というのがどうも説として強いようです。
サックスはもともと、木管楽器と金管楽器の橋渡し的存在として発明された楽器で、吹奏楽では木管楽器と金管楽器で音楽を構成しているので、この楽器は重要な役割を果たしますが、オーケストラでは弦楽器と管楽器という構成ですから、もともと必要とされていなかったわけです。
しかも今ほど大きな編成で演奏される事が少なかった時代の音楽に、サックスの音色はなかなか厳しかったのではないか?と推測されるわけです。
とは言っても、ビゼーのアルルの女のメヌエットでは、悶えるようなオブリガードが美しく流れてくると、思わず鳥肌が立ってしまい、決してオーケストラには合わないというわけではないのです。あくまでも作品に必要がなかった、という事らしいですよ。